きみはダイヤモンド!

クアン

2009年07月09日 21:00

高級ホテルやレストランが並ぶホーチミン市の中心街から歩いて30分ほど、小さな運河を越えると、4区に入ります。最近では再開発が進んでだいぶ様子が変わりましたが、少し前までは「治安の悪い貧困地区」として知られていた一角です。
その4区の真ん中あたり、小さなお寺の前から路地を奥深く入ったところに、私の「里子」のキム・ガンさんの家族が住んでいます。お父さんが早く亡くなり、お母さんのビック・トゥイさんが「おこわ売り」をして3人の女の子(キム・ガンさん、キム・クオンさん、キム・ハンさん)を養っています。
(ささやかな学費援助をしているだけなので、「里子」というのはちょっと大げさな表現だとは思うのですが…。)

青葉奨学会を通してキム・ガンさんに奨学金を送るようになって10年。青葉奨学金の支援対象は高校卒業時までなので、キム・ガンさんの高校卒業後は、妹のキム・クオンさんへの奨学金を送っています。
年に一度、1週間ほどベトナムを訪ねていますが、毎回キム・ガンさんの家を訪ねて、食事をしながら下手くそなベトナム語でゆんたくをしています。
小さな家、つつましい暮らしですが、とても素敵な家族です。

ところで、ベトナムはもともと漢字文化圏の中にあり、ほとんどのベトナム人の名前は漢字でも表すことができます。たとえば、ホー・チ・ミンさんなら「胡志明」、ベトちゃん・ドクちゃんなら「越ちゃん・徳ちゃん」、アイドル歌手のミー・タムさんなら「美心」という具合です。
あるとき、キム・ガンさんたちの漢字名が気になって、確認してみました。長女のキム・ガン(Kim Ngan)さんは、漢字で表すと「金銀」になります。日本ではあまり人名には使わない字ですが(ひらがなでは「きんさん・ぎんさん」という大先輩がいましたが…)、ベトナムでは「金銀」「金蓮(キム・リエン)」「金枝(キム・チー)」など、「金」を使った名前は珍しくないようです。

続いて、次女のキム・クオン(Kim Cuong)さんの漢字名を調べて、たまげました。漢字では「金剛」です。いかにも強そうな名前ですが、女の子の名前としては、どうなのでしょうか…。
でも越日辞書で確認してみると、この語の意味は、ただひとつ「ダイヤモンド」。
ベトナムの「金剛(キム・クオン)」は、「金剛力士」ではなく、「ダイヤモンド」だったのですね。

三女のキム・ハン(KIm Hang)さんは「金姮」。「姮」は日本ではほとんど目にしない漢字ですが、言い伝えによれば、お月様には「姮娥(Hang Nga)」という世にも美しい仙女が住んでいるのだそうです。3人とも、美しい名前です。
ちなみに、お母さんのビック・トゥイさんは「碧水」。こちらも美しい名前。私よりも2つか3つ年上の、とても働き者で優しいお母さんです。

先日、久しぶりにキム・クオンさんから手紙をもらいました。無事に高校を卒業したそうです。
家族みんな、変わらず元気でいるとのこと。キム・ガンさんは経済関係の短大で学んでいます。4年制への編入を希望していると言っていましたが、その後どうなったでしょうか。
キム・ハンさんは、9月からは確か中学4年生になるはずです。

キム・クオンさんは、この夏から調理師の専門学校に進むとのこと。近い将来、レストランかホテルで働くことになるそうです。
食べることが大好きな(たぶん…)キム・クオンさん。頑張ってね。きみはダイヤモンド!
いつか機会があったら、キム・クオンさんの料理を味わってみたいものです。

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