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2011年08月10日

ジョン・ミッチェルさんの報告

昨日の「占領下における対話」で、ジョン・ミッチェルさんが沖縄における枯葉剤についての報告をしました。
今日(8月9日付)の琉球新報の記事を転載します。


米軍の枯れ葉剤散布問題を取材し続けている英国系ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が8日、沖縄キリスト教学院大学で講演した。
ミッチェル氏はベトナムでは1960~70年代のベトナム戦争で米軍が散布した枯れ葉剤による土壌汚染問題が現在も続いていると指摘。
県内米軍施設での枯れ葉剤使用に関する証言が相次いでいることを踏まえ、基地内の土壌調査をすべきだと強調した。

講演は6日に開幕した国際会議「占領下における対話(DUO)」の一環。

ミッチェル氏は在沖米軍基地の退役軍人から枯れ葉剤使用に関する証言を集めており「何千ものドラム缶に入った枯れ葉剤を見た」などの証言を紹介した。
県内の広範囲にわたる米軍基地に勤務した退役軍人らが、施設内や周辺での枯れ葉剤の散布、貯蔵、運搬などで健康被害を受けたとして米政府に被害認定を求めている。

一方、米軍は「沖縄で枯れ葉剤が使用、貯蔵された記録や資料がない」として、当時の枯れ葉剤の存在を否定し続けていることを挙げ、「ベトナム戦争時ではあらゆる物資が前線基地の沖縄を経由した。枯れ葉剤だけなかったというのは理にかなわない」と強調した。

転載ここまで


私もミッチェルさんの報告を聞いたので、何点か簡単に付け加えたいと思います。
(同時通訳の方の日本語をイヤホンで聞きながらメモしたものですので、聞き間違いをしている部分があるかもしれません)

ミッチェルさんがなぜ沖縄の枯葉剤について調べようと考えたのか、その動機を知りたいと思っていたところ、講演の最初で、次のように説明されました。
ミッチェルさんは横浜を拠点に活動していますが、主な関心は沖縄のことだそうです。あるとき、ヤンバルについての記事を発表したところ、あるアメリカの退役軍人の方から、「私はヤンバルの基地で枯葉剤を扱った。それについて話をしたい」との申し出を受け、それがきっかけで取材を進めることになったそうです。

土壌調査については、ミッチェルさん自身も、大変難しいだろうと話されていました。
枯葉剤が使われていたのは、1960年代から70年代初め。今から40年以上前のことです。亜熱帯の沖縄では、しばしば激しい雨が降り、土壌が流出します。除草のために何度か枯葉剤を使った場所で、いまも土壌からダイオキシンなどが検出される、というのは考えにくいことです。
ベトナムでも、枯葉剤が撒かれた場所の多くでは、現在では高濃度のダイオキシンなどは検出されないようです。いまも枯葉剤の汚染が残っているホットスポットは、①枯葉剤が貯蔵され、積み込みの作業などで毎日のように漏れ出していた場所。つまりかつての米軍基地。ダナン、ビエンホアなど。②なんらかの事情で、きわめて大量の枯葉剤が捨てられた場所。などということになっているようです。
沖縄の場合も、枯葉剤使用による汚染が広範囲で残っている、ということは考えにくいです。ただし、枯葉剤がどのように扱われていたかによりますが、局地的にホットスポットが存在する可能性はあると思います。
それを見つけ出すのは非常に難しいでしょうが、米軍基地では枯葉剤以外にもさまざまな危険な兵器が置かれているわけで、環境調査を要求するのはとても大切なことだと思います。

米軍がなぜ沖縄での枯葉剤の存在を否定し続けるのか、その理由についてミッチェルさんに質問しようと思いましたが、質疑応答の中で伊波洋一さんが次のように話されていました。
枯葉剤が沖縄の基地で広く貯蔵・使用されていたことを認めてしまうと、沖縄の反基地感情を強く刺激する可能性がある。そのリスクを避けるために、政治的な判断として、否定し続けているのではないか、ということです。
私としては、退役軍人への補償の範囲を限定するために、沖縄での枯葉剤の存在を否定しているのでは、と思っていましたが、なるほど、そのような政治的な判断もあるのでしょう。さすが伊波さん、と思いました。

高里鈴代さんが、「枯葉剤の輸送に関するアメリカの記録は残っていないだろうか、それを公開させることはできないか」ということをおっしゃっていました。
ミッチェルさんは、そのような記録について何度か問い合わせたが、答えはいつも「そのような記録はない」というものだった。私は横浜で生活しているので、アメリカに対してそれ以上の交渉をするのは難しい、ということでした。
ベトナムでの枯葉剤散布については、具体的な散布のルートなど、かなり詳しい記録があきらかになっているので、輸送についても何らかの記録が残っているのでは、と思います。
それを探し出すには、アメリカで協力して下さる方が必要かもしれません。

私は、沖縄で枯葉剤を散布した目的が「除草」だけだったのか、ベトナムでの本格的な使用に向けてデータを集める「実験」の目的もあったのでは、と思っています。
そこで、「沖縄の基地で枯葉剤の実験を行っていたという具体的な証言はありませんか」と、ミッチェルさんにお聞きしました。
ミッチェルさんの答えは、「実験をしていたとの証言は聞いていない」ということでした。

また、「当時は他の場所で枯葉剤の実験を行っていたので、沖縄で実験をする必要はなかったのでは、と思います」と話されていました。
この部分については、私はちょっと納得できない部分があります。ベトナムの森林とある程度気候条件が似ていて、実際にベトナムのジャングルを想定した訓練が行われていた北部訓練場は、やはり米軍にとって枯葉剤の効果を試したい場所だったのではないか、と思っています。
ただ、私の考えはただの推測ですし、いまのところ、実験に関する具体的な証言はないみたいです。
仮りに実験が行われていたとして、詳しい事情を知っていたのはある程度立場が上の人に限られるでしょうから、証言を得るのはとても難しいのかもしれません。

その他、名護の方が「80年代に、キャンプシュワーブの谷間の土地が、トラック数十台分の土砂を持ち込んで埋め立てられたことがある。何か汚染があるのではと思って土壌を持ち帰って調査をしてみたが、その時は何も見つけられなかった。でも、ひょっとすると枯葉剤との関連があるのでは」といった証言をされていました。
ミッチェルさんの取材・報告をきっかけにして、いろいろな情報が出てきています。
米軍が行った歴史的な戦争犯罪である「枯葉剤散布」に、沖縄の基地がどのように関わらせられたのか、また環境や健康に対して、どのような影響を及ぼしたのか、少しずつでも明らかにしていきたいですね。


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