2010年10月19日

残念な知らせ

ベトナムの生徒たちから、30通余りの手紙が届きました。
手紙が届くのはとても嬉しいことですが、とても残念な知らせもありました。

カンザーのタンアン村出身の高校生、クエンさん、ランさん、トゥアンくんの3名が、学校をやめることになったと書かれていました。
タンアン村は、カンザーの中心地カンタン町から渡し舟で40分ほどのところにある離島です。タンアン村には高校がないため、ここの生徒たちは中学校を卒業するとカンタン町の高校に進みます。船の便には限りがあり、毎日通学するのは困難なので、学校の中にある寮に入るようです。

クエンさんたちも、村の中学校を出たあと、カンタン町の高校に進みました。
クエンさんは、中学生のときに「将来は学校の先生になりたい。そのために、高校に進んで頑張って勉強します」と書いてきてくれたことがあります。

ところが今回届いた手紙では、3人とも、家族の暮らしが厳しくなって、学校をやめざるをえなくなったと書かれていました。

「家庭の状況が厳しくても勉強を続けられるように」というのが青葉奨学金の趣旨なので、このような形で勉強をあきらめてしまう、というのは、本当に残念なことです。
奨学金の金額は、公立学校の学費や教材費をまかなうためには十分なはずなのですが、家庭の状況がたいへん厳しい場合には、奨学金の支援だけでは限界があるようです。

タンアンは漁業が中心の村で、クエンさんやトゥアンくんの家でも、漁業をなりわいとしています。
この付近の海や河口では、以前は魚やエビがとても豊富だったそうですが、1990年代後半ぐらいから漁獲量がかなり減ってしまったそうです。

数ヶ月前に届いた手紙でも、タンアンのある生徒がこんなことを書いていました。

「里親さん、ぼくたちをとても悲しい気持ちにさせている出来事があるのです。それは、こういうことです。村の人たちが毎日魚を獲りに行く河口があります。ぼくの両親もそこに行って働いています。でも、その河口の水がどんどん汚染されてしまって、エビや魚の獲れる量がとても少なくなってしまったのです。ぼくの村の貧しい人たちは、困って途方に暮れています。」

経済発展や工業化の進展に伴って、ベトナムでも環境汚染が深刻になっていますが、とくにタンアン付近の海に注いでいるティヴァイ川の汚染がとくにきわだっているそうです。
主な原因は、ティヴァイ川沿いの工業地帯にある台湾系の化学調味料会社VEDANのドンナイ工場が、未処理の排水を10年近くにわたって違法に垂れ流していたためだと言われています。
いまや、ティヴァイ川とVEDANは、ベトナムの環境汚染の象徴みたいな存在になっています。

現在、カンザーやドンナイなどの多くの漁民や農民たちがVEDANに補償を求めていますが、タンアンの漁民はもっとも深刻な被害を蒙っているのかもしれません。

クエンさんやトゥアンくんたちが勉強を続けられなくなってしまった理由について、具体的な詳しい状況はよくわからないのですが、タンアン周辺での環境汚染がひとつの原因になっている可能性は高いと思います。

カンザーは、かつて枯葉剤で破壊されたマングローブの森を再生させた場所として、世界的にも注目されているところです。
そのカンザーの小さな村で、いまこのような事態が起きているのは、やりきれない思いがします。


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Posted by クアン at 23:53│Comments(0)奨学生の手紙
 
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